2007-01-01から1年間の記事一覧

『流血鬼』、『老年期の終り』

藤子・F・不二雄短編集より、『流血鬼』を再読する。40ページ前後の、非・劇画というより、むしろ児童マンガタッチの短篇が、一本の映画、あるいは一作の長編小説に匹敵する濃密な経験を与えてくれることに驚く。藤子F は凄い漫画家だったのだなあ。 (しか…

...無垢にたえられるか

ウイリアム・ブレイク、『無心の歌、有心の歌』、寿岳文章、角川文庫煙突少年たちは神であったか。その神を倫敦のマルクスは実際に目撃したんだっけか? いつからか本邦は、ものの可愛さに価値を置くようになったようだけど、たとえば往来や公園で、犬を「人…

佃堀、そして、お稲荷さん 

昨日は、銀座〜佃島〜清澄庭園(旧紀伊国屋文左衛門邸庭園)〜平賀源内エレキ実験の地〜柾木稲荷〜芭蕉稲荷〜以下略を大川に沿って散歩しました。実に収穫の多い旅となりました。まず、佃島。 佃島の歴史等についてはこの方のブログと、ここらへんをまずはご…

一冊+一篇

仲正昌樹、『集中講義!日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか』、NHKブックス 仲正昌樹、「 「貨幣」と「自由」 ケインズとハイエクを結ぶもの」、「大航海 No.61 ケインズ/ハイエク」所収、2006年『日本の現代思想』はたいへん分かりやすく書かれて…

見つかった。何が?。ちぎれて飛ぶ野分の鳶が。

ずっと見失っていた一句を、『西東三鬼読本』で見つけることができた。鳶ちぎれ飛ぶ逆撫での野分山 昭和35年『変身』「鳶」、「ちぎれ飛ぶ」だけ覚えていたので、果たしてどんな一句だったけかとずっと気になっていたのに、なぜか見当たらず、十年以上も見失…

稲妻や浪もてゆへる秋津島

昨日雷のことに触れたら、春雷の午前でしたね。私は遠雷が大好きなんです。ぼこぼこぼこぼこぼこぼこぼこと雲の向こうで響いて来ると、じっと耳を傾けてしまいます。この、地すべりのような「ぼこぼこ雷」は、春と秋の深夜に聴くにかぎりますね。じつに不思…

ドローン法悦境

ドローン(drone)とは「持続低音」と訳されるのだろうか。 パイプオルガン、バグパイプなど、オルガン系の音色がお馴染みかもしれないが、ようは、ぶおおおおん、どおおおおおんん、ずおおおおおん、といった身体髪膚で受け止めざるを得ないような低い響きの…

永遠と一日

テオ・アンゲロプロス監督『永遠と一日』のサントラを聴く。ふとしたはずみに、あの静かなアコーデオンに導かれて始まるストリングスのイントロが頭中を占めることがあって、そうなると、是非あらためて聴いてみたくなる作品。 Eleni Karaindrou(エレニ・カ…

大川べり

あそびで銀座方面に寄ったとき、なるべく通うことにしている場所があります。 佃・月島を対岸に眺める、俗に「隅田川テラス」とよばれる、河川沿いの遊歩道です。一丁目から昭和通を越えて区役所〜新富町方面にまっすぐ歩き、入船を抜けて堤防で東側がさえぎ…

『獄中記』より

佐藤優『獄中記』は興味深く読むことができた。 私にとって、所謂「他者の欲望に欲望」できる本である。 たいへん恥ずかしながら、カール・バルト、エルンスト・ブロッホ、ニコライ・ベルジャーエフまでなら漠然としたイメージを抱くことができるが、作中で…

Boで一冊

ロデリック・M・チゾルム、哲学の世界4『知識の理論』、吉田夏彦訳、培風館.105円也。無線綴で、現行の放送大学テキストと同様な体裁だけど、定価は昭和51年初版4刷で1,100円というから、当時としては高めの価格だったと思う。このシリーズ13巻までが刊…

西東忌

きょうの春嵐は深夜から早暁にかけてだったのカナ。でも朝にはすっかり晴れ上がり、桜は満開に。 午前9時頃、艸拓先生が来てくれて久しぶりに拙宅の庭木を手入れしてもらう。南天まで植えてくれてありがとうございました。おまけに午後は、皇居・千鳥ヶ淵あ…

仏陀と弟子たち

仏典に目を通したり、仏教美術を鑑賞するたびに思い出すのが、手塚治虫(一発変換)の『ブッダ』である。たとえば、「サーリプッタ(舎利弗)よ」という釈尊の問いかけに触れるたびに、手塚のペンによる、グルグルまなこ(笑)のサーリプッタが想起される。…

いとうつくし

三十をすぎたあたりから何ゆえか、幼子がとてもかわいらしく感じるようになった。 幼稚園から小学校低学年のころも、近所の赤ん坊や幼子がとてもかわいらしく感じた時期があったことを覚えているが、最近の煩悩は、とっくに親になってもいい個体の生物的反応…

V.E.フランクル

ユダヤジョークの出だしで、なんだか強引にひぱり出したフランクルであるが、私が感じるかぎりでは、この精神科医/思想家の日本での受けとめられ方は、かの「収容所」を生きのびた地獄からの帰還者・証言者という認識にとどまっていやしないだろうかと、ちょ…

Jokes

『夜と霧』に、V.E.フランクルらユダヤ人が、過酷な収容所生活にあっても、一日に一度は創作ジョークを披露し合うルールを課していたというくだりがあった。フランクル本人も大変ジョーク好きの快活なお人柄だったそうだが、ユダヤ人と呼ばれる民族にどこか…

私のマルクス 佐藤優

毎回必ず読むべき連載モノがずっとないまま数年経っていた。でも最近、『文學界』の「私のマルクス」佐藤優を楽しみにしている自分がいる。ご周知の通り、佐藤優氏は、文部科学大臣外務大臣・田中真紀子(だったけ?)ら反外務省派反対路線から、ラスプーチ…

彼女の名はポーリン、樹の中で生活している。

『No Future - A Sexpistols Film』を観る。 畢生の名曲「Bodies」に登場するポーリン嬢が出演するのではないかと勝手な期待をもっていたが、やはり、出てこなかった。 おそらく今では50歳位の、ポーリン(のモデルとなった女性)が顔を映さずに登場して、「…

再び「左」「右」+つげ義春

いただいた図書館除籍本 『マンガ研究』(vol.4)、日本マンガ学界(2003.11) 『徹底討議 19世紀の文学・芸術』、平島正郎・菅野昭正・高階秀爾、青土社 『失われた時を求めて(2) 花咲く乙女たち 』、マルセル・プルースト、井上究一郎訳、新潮社 『フィルム…

青鞋

柱頭がしづかに狂ふ美術館 立てておく燃え崩れむとする琴を について、 「 この二句には、時間の流れの中に、ある臨界点が浮上する様をとらえた妙味を感じます。(......)青鞋は、存在一般が終点に向かうことにユーモアを見出しているかのようにも見えます…

amazonで二冊

Ernst Junger, Storm of Steel, penguin classics. Edward R.Tufte, VISUAL AND STATISTICAL THINKING:DISPLAYS OF EVIDENCE FOR MAKING DECISIONS, GRAPHICS PRESS LLC. 関連サイト等を閲するに、ユンガーのコレは、独逸語でこそその文体の妙味を味わえるの…

『失踪日記』

『失踪日記』、吾妻ひでお、イースト・プレス艸拓先生からいただいたので早速読む。即ち感動する。 最も印象に残ったのは、某アル中自助グループでのひとコマ。PP181〜182。 私は昨日... 風のように 木々のさえずり? その中で声を?聞いて? 仲間たちとのつ…

卑怯者の勲章

映画狂・N天先生に、Janine Grayという女優についてパソコンで調べてくれ、と命じられる。 Arthur Hiller監督『卑怯者の勲章』という古い映画に出演している端役だとのこと。キネマ旬報で見つけて、なにやら気になったらしいが、一体、何年前のキネ旬を読ん…

縦書きか、横書きか。

/.jpでこの記事を読む。そして、森博嗣氏の日記を読む。昨日のエントリで、みすず書房のヨコフォントについて触れたばかりなので、軽いシンクロ感。私は、「左手日記例言」の感想をちょっと記したとおり、左利きなので、横書きはありがたくなく、鉛筆、万年…

『水の構造と物性』

『水の構造と物性』、カウズマン/アイゼンバーグ、関集三/松尾隆祐訳、みすず書房 先日、「水中毒死」のニュースが世界を駆け巡ったようだが、偶然図書館の除籍本で入手。 物理化学の専門書なのでほとんど理解できそうもありませんが、造りがすばらしい! …

『宇宙戦争』『ラストシューティスト』

いまさらながら、スピルバーグ監督『宇宙戦争』と、ドン・シーゲル監督『ラストシューティスト』をレンタルで観る。該博な映画通のN天先生が口をきわめて絶賛していた『宇宙戦争』は、たしかに傑作とよんで差し支えない作品だと感じたが、主人公と彼の娘が、…

夏石番矢『俳句のポエティック 戦後俳句作品論』

なかなか入手できなかったのだが、隣町の図書館にあることが分かり、即借りる。 ちょっと興奮している。特に、加藤郁乎、鈴木六林男論はすぐさまコピーしてしまった。最近、何か考えてもそれを記す余力がなかったので、大変刺激された。戦後俳句について様々…

また図書館より

除籍本 『エッフェル塔』、ロラン・バルト、宗左近+諸田和治訳、審美社 『類推の山』、ルネ・ドーマル、巖谷國士訳、白水社 『死体は窓から投げ捨てよ』、丹生谷貴志、河出書房新社 『戦争論』、多木浩二、岩波新書そろそろこちらから何か図書館へgiveしなく…

図書館から

G・ルカーチ、『歴史と階級意識』、平井俊彦訳、未来社 『釈迢空詩集』、思潮社現代詩文庫 ジェフィリー・S・ヤング、『スティーヴ・ジョブズ パーソナル・コンピュータを創った男(下)』、JICC出版局積ン読ばかりとなり果て候。

いまさら『世中愛叫』

忘れていた。昨年の話だが、『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んだ。 南天先生の前で、セカチュー類をああだこうだ言うからには一応読まないとイケンかもしれませんね、と口をすべらしたのがいけなかった。会うたびに、もう読んだか、読んでないならここに10…