Jokes
『夜と霧』に、V.E.フランクルらユダヤ人が、過酷な収容所生活にあっても、一日に一度は創作ジョークを披露し合うルールを課していたというくだりがあった。フランクル本人も大変ジョーク好きの快活なお人柄だったそうだが、ユダヤ人と呼ばれる民族にどこか根暗なイメージを抱くのだとしたら、それは、思いっきり固定観念にすぎないのかもしれない。
というのも、時折無聊を慰めるジョーク集で、もっとも印象に残るジョークは俄然ユダヤジョークなのだ。もちろん、英国にも傑作はふんだんにある。特に、エスニックジョークとなると最も冴えたものがブリティッシュジョークかもしれない。例えば、
問い)宇宙船に、サル一匹とアイルランド人ひとりを乗せて宇宙旅行させたらどうなったか。
答え)帰還した彼らを迎えたら、サルが運転していた。
これは、アイルランド人が飲んだくれで、仕事をしないというステロタイプを披露したものである。
落ちが数字一点にかかっているのがクール。
エスニックジョークは、世界中でもっとも交わされているジョークかもしれないが、誰にでも分かるというわけではない。例えば、次のアメリカンジョーク。
(車のステッカーの台詞)ポーランド人が運転しています
なぜかしらないけれど、かの国では、ポーランド人は「お馬鹿さん」ということになっているらしい。でも、日本人にとっては、キューリー夫人、ショパン、ザメンホフなどの大天才が思い浮かぶのではなかろうか。渋いところでは、ポーランド記法で有名な、論理学者・ウカシェヴィチもいるし、どうしてもお馬鹿なイメージとは結びつかないと思う。なので、エスニックジョークは、面白いものも少なくないが、それほど普遍的なジョークであるとは言い難いだろう。
一方、われらがユダヤジョークは、誰でも笑える。といっても打率が高いわけではない。日本人である私が聞いて、たわいもなく感じるものもある。しかし、ヒットするものは即ち場外ホームランなのがユダヤジョークではないかと思う。
今日は、その一つを引用したい。
ブレジネフと毛沢東が国境沿いを歩きながら話し合っていた。
プロレタリアの定義、マルクス主義の解釈、革命の段階について......二人はいろいろと言い争っていた。
そのうち、ソビエトの国境側にヤギが1頭あらわれた。ブレジネフは立ち止まるとヤギに向かって話しかけた。
「同志ヤギよ、乳の月間目標生産量は達したかね?」
ヤギはメエエと鳴くのみ。
毛沢東はしみじみと言った。
「あなたはバカだなあ、ブタなんかと話して」
それを聞いたブレジネフは勝ち誇ったような顔をして言った。
「ワハハハ、バカだなあ、あなたは、ヤギとブタとの区別もつかんとは」
「まさか、私はヤギと話していたのだ」
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