『水の構造と物性』
『水の構造と物性』、カウズマン/アイゼンバーグ、関集三/松尾隆祐訳、みすず書房
先日、「水中毒死」のニュースが世界を駆け巡ったようだが、偶然図書館の除籍本で入手。
物理化学の専門書なのでほとんど理解できそうもありませんが、造りがすばらしい!
みすずの造本なんてみんなおんなじぢゃん、と突っ込まれそう。しかしまずもって、レモン色のカバー地に万年筆的濃紺色の水分子立体モデルのイラストがシンプルで素敵だ。レモンカラーはレクラム文庫に近い。
そして本文版面。表、グラフ、イラストレーションが豊富で本文とのバランスも絶妙。折込ページとして「種々の氷の基本モードおよび格子モード領域における振動スペクトルの比較」「水の振動分光学的性質」の作表があるのも、わくわくさせてくれる。
あと、フォントがいい!ヨコ文字の「みすず」は初めて入手したのだけれど、タテ文字用の、乙に澄ましたというか公文書的な感じが無く、人懐っこく眼に吸い付いてくるのだ。もしかして、みすず明朝は、タテよりヨコに優れているのではなかろうか。
表4にある惹句冒頭「水は地球上にもっとも多量にある化合物であり,すべての生体系の主要成分であるが,その構造と物性は十分に解明されていない......」は、あー是非とも理解したいなあと思わせる。
しかし自分のような、まず、「水」と聞くと、「まず水。その性のよしあしはてきめんに仕事にひびく。江戸府内のことにして、谷中三崎か浅草堀田原あたりの水ならば......」(石川淳)を連想する文学系人間には、おバカにも寛容なチューターの友人が欲しいところ。