...無垢にたえられるか

イリアム・ブレイク、『無心の歌、有心の歌』、寿岳文章、角川文庫

煙突少年たちは神であったか。その神を倫敦のマルクスは実際に目撃したんだっけか?
いつからか本邦は、ものの可愛さに価値を置くようになったようだけど、たとえば往来や公園で、犬を「人間の子供」のように扱う光景を見せられると、私は見なかったことにしたくなる。

実際の人間の子供でも同様だ。不躾な子供らをただ見ているだけの親たちに出会うと、すべて見なかったことにしたくなる。そんなかんじで、私は、虐待や蹂躙に出会っても見なかったことにしたくなるのかな。

虐げられる無垢な存在をしっかりと見つめて、『無心の歌、有心の歌』を残したブレイクという芸術家には、なるほど、「「ウイリアム・ブレイクは我等の同時代人である」などといえるほど、現代の私たちの心は、強くも深くもない」(中沢新一あとがき)という気持ちを素直に抱く。しかし、「ウイリアム・ブレイクは私達の未来である」と感じ取ることは、今のところ、どうにもできそうにない。読後、ちょっと、気弱になってしまっている。
なので、Ry Cooderのこの曲に逃避して寝ることにします。


無心の歌、有心の歌―ブレイク詩集 (角川文庫)

無心の歌、有心の歌―ブレイク詩集 (角川文庫)