一冊+一篇

baskov2007-04-30

仲正昌樹、『集中講義!日本の現代思想ポストモダンとは何だったのか』、NHKブックス
仲正昌樹、「 「貨幣」と「自由」 ケインズハイエクを結ぶもの」、「大航海 No.61 ケインズハイエク」所収、2006年

『日本の現代思想』はたいへん分かりやすく書かれている。はじめて仲正氏の文章を読んだのは、数年前「情況」に掲載された、D.Humeについてのもので、難解ではないが決して読みやすくはない印象だったけれど、新書などを著述して有名になってからは、般Pフレンドリーな著述家となられた気がする(上記ケインズハイエクも同様)。勿論、研究書レベルのものはその限りにあらずだろうけど、というか、別に確認していない。

ニューアカ”リアル”ブームの頃('82〜'84)は、「思想」など全く興味がなかったが、'86年に、竹田・小阪『現代思想入門』JICC出版を読んだ当時を思い出す。あの頃はまだまだ、浅田、中沢、山口、柄谷、栗本はポピュラーであった。特に栗本は、11PMなどの深夜番組にも頻繁に顔を出していた。彼の場合、米国に行って以降、露出度が下がった記憶がある。栗本帰国後の著作『南部』を読んでみたが、今となっては何も覚えていない。

ところで、御大浅田の名前をはっきり意識したのは、知的不成熟度の高かった母校(高校)で、とある日、とある同期生が「皆に言いたいことがある」と立ち上がり、我々の知的堕落を叱責するスピーチを始めた時だ。唯一覚えているセリフが、浅田彰くらい知らなくてどうする!」というくだりなのである。新聞位は毎日読んでいたので、一度は目にした名前ではあったが、何者なのかは記憶になかった。
んで、本屋で『構造と力』を立ち読みしてみた。教科書レベルの「基礎解析」に四苦八苦している自分にはまったくお手上げだと思い、即、書棚に戻した。鑑みるに、『構造と力』が理系的書物に映ったということでしょう。タイトルからして、どっちかといやぁ、物理学ですもん。

しかし10年後、文庫本で読んでみた『ヘルメスの音楽』には正直感動した。「これいいじゃない!」と叫びたい気がした(笑)。加えて、NHK放映の、ジャック・デリダ、彰氏、磯崎新氏との鼎談での、衒学的でなく分かりやすいトーク術を観て、スマートだなあと、いたく感心したものだ。なので、彰氏に対しては今でもどこか親しみのような気持ちを抱いているのだが、『構造と力』は未読了だ。じつはそれほど難解ではないことも知っているけれど、六日の菖蒲どころではないですもんね。 東浩紀存在論的、郵便的ジャック・デリダについて』ですら......。でも、山形氏との「クラインの壺」論争があったので(これも最早むかし話)、いつか読んでみます。

そんなこんなで、仲正氏による、フランクフルト学派、とくに、アドルノについての一冊まるごと『集中講義』が出たら絶対に買うだろう。ドイツロマン派についても同様。


ヘルメスの音楽 (ちくま学芸文庫)

ヘルメスの音楽 (ちくま学芸文庫)