なぜか中学校三年のときの「技術家庭」で菊の栽培やらされたんだよね。インターホン製作の後だったんで、なんで「理科」で扱うべきことをやらされるんだろう?と当時疑問に思ったんだよね。
一番見事に開輪させた生徒の白菊は、も・ち・ろ・ん、速攻でツッパリたちによってチョン斬られていたね。
「技術家庭」は、生徒を掌底で躊躇無く殴打する狂師Wから、まだほんのちょっと青年くささが残る新赴任のW(同姓)教師の担当になっていたんだけど、W教師はツッパリたちの格好の標的にされてしまい、かれの「技術家庭」クラスはガラガラと崩壊していったんだよな……。

糞餓鬼どもに教師としての自信を完膚なきまで打ち砕かれたW教師は、おれたちが卒業した直後に辞表を提出し学校を去ることとなり、その噂を聞きつけた元ツッパリ2名がW教師のアパートを訪れ、「おまえこれからどうすんだよ? しっかりしろよ! 仕事あんのかよ?」と“気合”を入れたらしいんだけど、W教師は「地元に帰ってタクシーの運転手になることにした。ま、せっかく来たんだからラーメンでも食って帰れよ」と実にしょんぼりした面持ちでいたことを当の元ツッパリから聞かされたんだよね。
かれら2名はツッパリグループ所属ではあったけど人間としてマシな方だったので、というか飯田橋体育大学付属高校に進学するような、近隣中学校のライバル悪童どもから「え、なんで?」とあっけにとられるような面倒くさいタイプだったので、わざわざW教師のもとを訪れたのは、かれらの心に幾分か残存していた良心の呵責によるものだったのかもしれないとは思うんだよね。でもここで「かもしれない」と留保するのは、すでにかれらの心には“幾分”かの良心すら残存しておらず、クラス会かなんかの席で笑い話のネタにするためにわざわざW教師の泣きっツラを伺いに出向いた可能性もあるからなんだよね。

まったく非道い話だとは思うよ。