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いわゆる「放置処分」が決定された S さんであるが、彼と関らなくてはならぬことがまだ一件あるのが俺にとっての頭痛の種である……。

Sさんとはどういうひとかというと、たとえば、クライアントからのメールに以下の文があったとする。

作業Pについてはまだ新人さんにとっては複雑なものであり正しく理解していただくことが難しく思われますので、現状やらなくてよいものだと判断します。よって『新規手順書』に加える必要はありません。

それを受けてSさんが書き込んだ『新規手順書』には
「作業Pの内容はかくかくしかじかでございますが、まだ新人さんにとっては複雑ですよってこの作業にあたる必要はございません!」(太字、下線、赤文字ママ)との文言が加えられているのである。

しかも、「かくかくしかじか」の部分については新たに図表まで作成しているのである!
しかも、なにゆえか語尾がそこだけ「ございます」調なのである!

クライアントさんから早速クレームが届く。
「なぜ、『新規手順書』 に作業Pについて書き加えたのでしょうか? 日々業務でお忙しいこととは存じますが、こちらからのメールにつきましてはしっかりと内容を把握してくださいますよう御願い申し上げます云々」

Sさん(休日)の隣席の上長は目を吊り上げて「馬っ鹿野郎っ」と叫び、そしてげんなりした表情で机につっぷす。

こんな光景が一体何回繰り広げられてきたことか知れやしないのである……。