ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンエース』『仮面ライダー』などを幼稚園にあがるまえに観た光景として思い出す際、そこにどうしても大きな記憶の改竄が施されてしまうことを告白したい。
というのも我が脳裏に浮かぶそれら特撮モノの映像は全きカラー映像であるのだが、当時の我が家の受像機は筐体上部に持ち運び用の把手が付いた SONY製白黒テレビだったのだ……。

昭和49年頃まではTV番組の途中に「カラー」というテロップが表示されることがままあったのだが、おれは「カラー」が「色」を意味することは理解していたものの、その表示の意味が分からず、一体それが何なのかを何度も母親に訊いていた。なぜかといえば、白黒だって色には違いないからである。しばらくして(ようやく誰かの家で)カラーテレビを体験したことによって、「カラー」表示の意味に合点がいったという次第であった。

同じような事柄に逢着したのは幼稚園生だったとある日、「なんで薬を飲むときは水じゃないとだめだと云われるのだろう?」となんとなく独り言を発した際、すぐ傍にいた児がすかさず「だって水は味がないから!」と珍妙な回答を寄せてくれたときであった。おれはその説明が正しいか否かよりも、他のものと比較して特徴が少なく感ぜられる対象に対しては「〜がない」と表現されることがあり得るのだなと、その理屈には充分納得できないながらも、自分自身で或る一般的傾向に気づいたことに対する仄かな満足感を得たのであった。


※当時ウチで使用していた SONY製白黒テレビはこの方のブログにとりあげられているモデルのデザインに近い。画面は15インチ位はあったはずである。4〜5歳児のおれには持ち運びするのは無理な重量だったと記憶している。