三歳のころ、家にあった美術展目録中の或る画家の諸作品に心を惹きつけられたことをおぼろげながら記憶してゐて、中学ニ年生のときに図書室にてたまたま頁を捲った画集のなかでそれらと再会したことの喜びを思い出した。アンリ・ルソーという名前はそこで覚えた。

家にあった目録はとっくの昔に捨てられてしまったらしい。私が余程ぞんざいに扱ったせいか寒冷紗が剥き出しになっていたのを覚えている。それと、解説のページをクレヨンだらけにしたことも覚えている。

いまだに、アンリ・ルソーの諸作品に接すると寒冷紗を想起する。