中原昌也作業日誌2004→2007』(boid)を読了。
まず自分の誕生日の記述を捲ってみると、そこには、(オレだったら)3年ほど後引きそうな出来事が書いてあってガックしきた。
でも、いつもの慟哭が頻出する前半を読んでいるとなんだか元気が湧いてきた。
他人の不幸は蜜の味というのではなく、精神的に追いつめられ、かつ、部屋の電気や携帯電話まで停められる逼迫状況のなか、(せっかく)振り込まれた原稿料・印税などを惜しげもなく渋谷・新宿・西新宿の音盤店、映画館等に消費(投資)する姿に感動させられたのだ。さらに、そうした諸作品に涙を流したり、居ねむりしたりする筆者の姿を思いうかべ情動・情緒的な刺激を受けた。

消費・散財日記はいろいろあるが、ともかく、この作業日誌には喜・怒・哀・楽がそろっている。院卒作家さん、電通作家さんでは書きたくとも書けないだろうと思う。(島田雅彦氏に「最後の文士」呼ばわりされていたのは知らなかった)

加えて、音楽家ということもあるが、人付き合いの広さ・頻繁さが印象的だった。
作家志望+貧乏+対人恐怖症気味な若人は「人的交流の豊富さ(=社会資本)が小説家として塁を摩すための必要条件だとしたら困るなあ」と、ちょっと暗澹たる気持ちになるやもしれぬ。
ぜんぜん関連性はないだろうけど、解毒剤代わりとしては『ムージル日記』、野間宏『作家の戦中日記―1932‐45』なんかがいいかもしれないね(オレはまだ読んでない)。


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