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小学生のころは実家が富裕な同級生に洋楽ファンが多かった。そうでなければ歳のはなれた兄姉の影響で小学生にもかかわらず『ミュージックライフ』とか眺めているひとたちだったろうか。

おれは仲のよい友達と好んで アリス を聴いていたのだが、 TBSラジオ『夜はともだち』のワンコーナー「シンコー・ロックショー」のおかげで洋楽にも親しんでいた。

ベイシティベイ・シティ・ローラーズは、実家が貸しビルなどの不動産業を営んでいる K さんが大のファンだった。御祖母ちゃんが大女優だった悪ガキの O もそのくちで、よく K さんと一緒に レスリー・マッコーエンがどうとかこうとか、ミッチェル がどうとかこうとかお喋りしていた。

おれはベイシティよりも、森永のCMでヘヴィーローテしていた バスター のほうが好きだった。とくに ビューティフルチャイルド がお気に入りで、EPを持っていた O の家で何度も聴かせてもらったことをいま懐かしく憶い出す。

しかしこれってすべてが模造記憶ではないのか?
おれの人生のなかにそんな時節が本当にあったのだろうか?
ひょっとするとあかの他人さまのあまりにも遠い過去の記憶が何かの加減で偶然重ねあわされてしまっているのではなかろうか……。