土曜日はNさんに誘われて『ニーチェの馬』(原題:A Torinoi Lo/The Turin Horse )を観ました。
ほとんど情報を得ぬまま会場に向かったので、「貧しい家族と飼い馬の7日間にわたる御話」程度の理解でいることをNさんに伝えたのですが、じつは、Nさんも事前情報がゼロのようでした。

長回しを多用した作品でしたが正直あっと言う間の150分でした。Nさんも同感だと言いました。なぜなら、7日間ではなく6日間の物語だったからです。想定外に一日分少なかったので“錯覚”として「あっと言う間」に感ぜられた次第なのであります。
わたしは観はじめて暫くしてから、もしかすると旧約聖書『創世記』を意識した作品じゃないのかと感じましたが、Nさんは「風のつくり方からして『サタンタンゴ』の監督に違いあるまい……」と直感したのだそうです。しかし、つくづく思うのは、なぜNさんは開場後誰よりも早くチラシを手にしたというのにそれを漫然と眺めただけでバッグにしまったのだろうかということです。「日ごろセドリばかりしているので入手すること自体が目的化しているのではないか……」と若干心配になりました。
ところで当作品のモノクロの質感が、わたしが観る夢の質感を想起させるので非常に驚きました――というのも、わたしはモノクロの夢を観ることが殆どないからです。とくに冒頭のなのですが、わたしの夢に顕れる動植物はなにゆえかこのトリノの馬のように濃厚な存在感が纏わりついているのです。覚醒時にその感覚を味わえただけでも大きな収獲でした。
Nさんは「いささかケレンミを感ずるよね……」というような感想でした。ロベール・ブレッソン監督を敬愛している彼だからこそ斯様な評価となるのかもしれません。