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ヤコヴ・M.ラブキン、「トーラーの名において――シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史」、菅野賢治訳、平凡社
昨年中に殆ど読んでいて、一月のはじめに残りを読んだ。伝統主義ユダヤ教徒によるシオニズム(イスラエル)批判の書。非常に勉強になった。特にイスラエルの言語政策、脱宗教化/世俗化政策……それにしても高価すぎる。
昨年読んだなかには、エリ・コーエン『大使が書いた日本人とユダヤ人』(中経出版)も興味深かった。著者は元駐日イスラエル大使で空手の達人でもある。驚いたのは彼が日猶同祖論者的な考えを抱いているらしいこと。三笠宮と会談したときには宮から「日本人とユダヤ人は違いますよ」とやんわり釘をさされた躱されたことを明かしている。
あと、早坂隆『指揮官の決断 満州とアッツの将軍 樋口季一郎』(文春新書)では、樋口季一郎のユダヤ人救出についての伝説の部分と事実の部分を慎重に書き分けているのが印象的だった。特に参考になったのは以下
- 2万人救出というのは樋口の回想録を刊行した書肆側の改竄ではあるが、イスラエル政府はその数字に対して訂正を求めてはいない [追記]というより、イスラエル側もその数字を使用することがあった、かな。(要確認)
- 救われたユダヤ人の総数は、当時の大陸鉄道事情を考慮すると数千人とみるのが妥当である
- 河豚作戦は所謂オトポール事件の後に本格的に提唱/議題化されたのであって、独逸第三帝国からの
警告要請を無視した英断は、樋口の人道的な配慮によるものと推測するのが妥当であること - 樋口自身にとって終生消えることのなかった戦争の記憶はアッツ島の兵士たちを見殺しにせざるを得なかったことであって、オトポール事件については挿話的な受けとめ方をしていたらしいこと
- 杉原千畝の場合とは相違して、ユダヤ人社会での樋口の認知度はかなり低いだろうこと
- イスラエルの「黄金の碑(ゴールデン・ブック)」とは献金者
に対するの功績を記録したものであり、樋口の名が刻まれているのは、ハルピン・ユダヤ人協会会長が樋口の名をユダヤ人社会にとどめるために施した配慮であったこと - ハルピン・ユダヤ人協会主催の大会で樋口が登壇するときの警護団には、のちにタイトー(インベーダーゲームで有名になった)を創業する、若き日のミハエル・コーガン氏がいたこと

トーラーの名において シオニズムに対するユダヤ教の抵抗の歴史
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