Tokyo-Ga

小津安二郎監督へのオマージュとして評判となった、ヴィム・ベンダース監督『東京画』('83)では、東京を移動している車中における、TVのザッピングシーンがある。

神宮球場の「ヤクルト×巨人戦」は解説が野村克也氏である。「野村スコープ」が評判だったのはあの頃だったっけ。

動物番組らしきもの、歌番組、全く記憶にないドラマのOP、更に続く『銭形平次』のOPから水曜日の午後8時であることがわかる。

困ったことに、この全く知らないドラマが気になり始め、愚なことだが、居ても立っても居られなくなり、気付けば検索している。

まずこの映画の撮影が昭和58年であることが判った。それさえ判れば簡単だろうと高をくくるが、なかなか当ドラマへと辿りつかない。

ようやく、「ドラマ」「昭和58年」などを検索語としたのが大間違いだったことに気付き、それではと、先ず撮影月を調べてみると、4月であることがわかる。だが、その後もヒットしない。

仕様がないので画面からなんとか読み取った俳優の名前(小野寺昭花沢徳衛)でやってみたら直ちに判った。

御宿かわせみ』というNHKの時代劇であり、このシーンで流れている主題歌は高橋真梨子の「祭りばやしが終わるまで」という曲であった。

この日は、昭和58年4月13日(水)。

奇しくも、小津安二郎監督『小早川家の秋』に出演した二代目・中村鴈治郎 が亡くなった日だったのだ!

しかしまあ、このような殆ど意味のない検索行為に及ぶということは、少々強迫神経症傾向にあるということなので注意しなくてはならない。

とくに本屋に行くのがよろしくない。

日ごろ縁のない領域、あるいは興味はあるがずっと後回しにしてきた領域のものが、本当は自分にとって大きな価値のあるものなのではないかという強迫観念に支配され、その機会損失の膨大なことに圧し潰されて、激しい虚無感に苛まされることになるのだ。

たとえば今日のところは、「会社法」「公認会計士試験」「機械工学の数学」「アナール派」「古代ペルシャ文学・藝術」「江戸時代の漁業」「中世のくずし字、連綿体の読み方」「フラクトゥールの読み方」「ミニマリストプログラム」「育児」などなど。

しかし何と言っても(学生時代からの)最鬼門は、法政大学出版局ものと人間の文化史」シリーズ(全168巻?)と、大月書店などのマルクス主義関係である。うっかりこれらが陳列された本棚の前に立つと頭痛や軽い吐き気さえ覚えることがある。だったら思い切って読破を目指してみるのも一興なのだが、なかなかそうは行かないからこその鬼門なのだ。