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昭和53年頃の話だが、たしか渋谷パンテオンのならび(東急文化会館内)にアニメグッズを扱う店があって、熱烈な『宇宙戦艦ヤマト』ファンだった級友Tは、当時の小学生にとっては高額(3千円?)の、ヤマトの設計図がデザインされたルーズリーフ用26穴バインダーを購入したのだった。

どういった経緯だったかは忘却したが、級友Tは、「おれがそのバインダーを購入することはないだろう、なぜならそんな金は持っていないのだから。なんなら10万円かけてもいい!」と級友Aと級友Sの前でバカ丸出しの宣言をしていたので、購入したブツを自室の本棚の奥に隠し置いていた。

ところが、たまたま遊びに来た(嗅覚するどい)級友Aにブツをさぐり当てられてしまったのだからたまらない。級友Aはことあるごとに「10まんえ~ん!」と大声をあげながら級友Tに右手を差し出すのである。

―― こんな、ほんとうにどうしようもない40年以上も昔の余計な記憶が、此度の「10万円」によって吾が脳裏に浮かび上がってきてしまうのであった……。