Sくん篇(続きのつづき)


もういい加減にしたいので、以降茶々をいれず、一気に終わらせたく存じます。

  • [小中学校時代の友達Sくん]
    Sくん:「皆もようやく気づいて立ち止まったときには、それはスーパーの袋なんかじゃなくて、髪の長いひとが高枝の繁みにうつぶせになって、おれたちの様子をじっとうかがっていることが分かった」
    迂 生:「ど、どんな顔してたの!?」
    Sくん:「よくわからなかったけど困惑顔というか警戒している表情に感じた」
    迂 生:「枝っていってもどれくらいの高さだったの?」
    Sくん:「二階家の屋根よりもちょっと高い感じじゃなかったかな……6〜7メートルくらいかな? それで、2〜3人が一斉に懐中電灯をそのひとに向けたわけ」
    迂 生:「うわああ余計なことを……」
    Sくん:「俺もそう思った。そんでそのとき、ソレが一瞬で直立したの」
    迂 生:「無理だね」
    Sくん:「そう。ぜったい無理。だって動作ってものがないんだもん。光があたった瞬間、もう直立してんだもん。人間ワザじゃないよ」
    迂 生:「枝は揺れていた?」
    Sくん:「ぜ〜んぜん。それで俺たち、次のアクションのきっかけ失って口あんぐり状態だったんだけど、そのうちソレが浮遊してこっちに向かってきやがった」
    迂 生:「やっぱり鳥とか?」
    Sくん:「そんな段階はとっくに終わってんだよ! 浴衣のようなものを着た乱れ髪の女性がはっきりと見えた。ソレが着地したときは、なんていうか、怒気を含んだ表情だった」
    迂 生:「それ、だれかに頼まれた地元民だった可能性は?」
    Sくん:「もののけだと分かったのは浮遊の仕方なんだ。静かに降りてくるんだけど、左右にゆらぎがあるんだよ。わかるかな? 降りてくる過程で左右水平方向に1メートルくらいの幅で瞬間移動するんだよ。いってみりゃあ『超短距離ワープ』だね。で、地面に着地はしてないの。間違いなく浮いているの!!」
    迂 生:「そんで、一体どうしたのよ!?」
    Sくん:「その女幽霊がちょっとこちらににじり寄った瞬間、先頭の奴がたまらず『うがあああああああっ』って叫んで逃げ出して、それを合図にして全員が全速力で走って逃げた」
    迂 生:「山の夜道なのに危険だったねぇ……」
    Sくん:「でもあれだ、日頃の鍛錬のおかげだね、全員無傷で宿舎に辿りついた。みなもの凄いスピードやった。あとで『100メートル10秒切ってたんちゃう?うちら」って冗談じゃなく本気で云い合ってた・・・」(昭和58年頃)


とまあ、Sくんはこんな話をしてくれたのだけれど、事後仲間内でいろいろ検証したらしく、迂生からの疑義にはしっかりと答えてくれました。
迂生のおおきな疑問はいくら月夜とはいえ山中夜道でそんなにはっきりと人間(=幽霊)の表情・動きが観察できるものなのか? ということでしたが、それに対してかれが答えるに、「幽霊のやつ全身がぼんやり自光していやがったんだよ・・・」とのことで、「ああっ思い返すたびに気色悪い!! あの女幽霊ずっと脳裏に残ってこっち見てやがる!! やっぱり話すんじゃなかったよ(泣)」を連発していました。
すかさず迂生は「結局それは『夜光人間』の出没だったんじゃなかろうか?」と、かれのテンションを和らげてあげようかとも思いましたが、小学校時代のSくんは、ポプラ社怪人二十面相シリーズではなく、偕成社版ルパンシリーズのファンだったことを思い出したのでやめときました。

迂生の筆力不足で誠に申し訳ありませんが、これ笑い話なんかでなく、れっきとした心霊ばなしです……。


おやすみなさいませ。。。