「幽霊数2」による怪話分析(1)


稲川淳二が心霊の秀逸なる語り手であることを初めて知ったのは、昭和61年8月某日放映の『オールナイトフジ』にてであった。

なつかしいなあ。

それまでの怪奇譚と稲川師匠のそれと一体なにが違うかといえば、稲川師匠には玄妙な「グリッチ感覚」がある点ではなかろうか。
たとえば、
伊豆?の旧家の合いの間で仮眠していたところ、酔いを醒ましに磯に出ていた友人大勢が帰ってきたらしく、「ワイワイガヤガヤ」とした様子が聞こえはじめてきたのだったが屋敷に上がり稲川師匠が寝ている部屋に入って来たとたん、かれら/かのじょらのお喋り声が「ガガガガザザザザザー」というふうに、まるでラジオノイズのようにメタモルフォーゼし、同時に彼の身体は金縛りにあい、そのうち目の端に坊主が念仏を唱えている姿があらわれはじめた・・・
という体験談の、まさに「人語→ノイズ→人語」のチューニング現象がそれに当たるだろう。