全国的に認知されているであろう出来事や流行言葉で意思疎通をはかることは初対面の方となじまんとする場面では確かに役立つものだが、なじんだあとは、各員周囲でなにが流行っていたかをくっちゃべるほうが楽しくなってくるものだ。

たしか高校に入った最初の夏に山○くんが語ったことに、彼の高校のクラスメイとのひとりが卒業した中学の学級では子供ばんどが大流行で、遠足のバス中ではみんなで大合唱したという話があった。わてらの中学校で子供ばんどを聴いていたのは、山○くんと俺くらいだったので、とても好ましいことのように思えたものだった。

先日記したスカコア男と出合ったバイト先で一番話が合ったのは、稲門文学部に在籍する漫研(町山さんの後輩?)の男で、彼はドゥルーズデリダなんかを好んで読むような人間であり、かつ、ネオクラが大層お気に入りだった。彼が言うには、漫研で流行っているのはネオクラなどではなく三上寛であり、「だれかが三上の声を真似た鼻唄をはじめるとみんなもそれに合わせたりするのが愉しいんですよ!」とのことだった。

バイトの最終日は彼に誘われおーくまこーどーのそばにある小屋での学生演劇を観にいくことになっていたので、時間潰しに彼のアパートに遊びにいくとインギィーやらのスイープ奏法をいとも簡単に披露してくれた。「うまいねー」と褒めると「まあ、こんなの馴れですよ……」と云っていた。

そのとき彼が聴きつぶしていたのがジェイソン・ベッカーであって、その名前すら知らないおいらは彼から録音テープを一本もらい、それは今でも保持してある。

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