円谷、そして、森田

昨日、“幼児のころ観ていた『ウルトラマン』”なんて分別ぶった書き方をしてしまったが、当時TV放映されていた円谷プロシリーズの影響は俺の人生のなかにずっと残り続けていくだろうと思う(なんて言うと、ずいぶん大仰だな)。

世間では特撮ばかりが注目されているが、音効のすばらしさをも語るひとは少ないのではなかろうか(この分野について追いかけたことがないので推測なのだが)。

ただし、円谷プロシリーズといっても『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に限っての話で、いっそのこと『ウルトラセブン』だけなのよ、と言ってもよいのだが、『ウルトラマン』のロケ撮現場から放たれる、いわば「日向の昭和」とでもいうべき自然光の発色具合には、他に代わるものがない独自の魅力が閉じ込められているので、やっぱり無視できない。

高校二年の修学旅行先の旅館で、俺は『OUTSIDER』を聴いていたんだけど、なんかの加減でテープがB面に反転しちまって、ウルトラセブンポール星人が登場するエピソードが流れてしまった。うちにはヴィデオ録画・再生装置がなかったので音声だけを録音していたのだ。ヴォイス・チェインジャーで声のピッチをあげたポール星人が「ウルトラセブンよ!」と呼びかける、あの名シーンだ!

そうしたらクラスで一番、漫研的な人間(当時はまだ『オタク』という蔑称はなかくて『漫研』だった)を差別している奴が、「なにっ?、ちょっとまてよおい、あいつがかよ...信じられねぇ...」と、失望感を丸出しにした表情をみせたので、俺は黙るほかなかった。彼と俺との間にはそれ以来ずっと、心理的な距離ができてしまった(元々仲良しではなかったので、どうってことはなかったのだけど)。

(高校教師・真田広之のエンディングナレーション風に) '80年代初頭の男子たちには、ほんとうに、まだまだ精神的な不自由さが残っていたよね。ダダやブルトン、そして、アルファビルがそこに在ることを、独り僕だけが噛みしめていた。