ランドスケープ的にも鉄筋建築がダメだなんて一切思ってません。丸の内や大手町近辺のビルヂングを鑑賞するのは大好きなくちです。ただ、住む地域がそれだと息が詰まるだろうなと強く感じます。住環境が単純幾何学的な建築や構造物で囲繞されるというのが、どうもおれには耐えられないのです。

もちろん植物はひとの心をほっとさせる力がありますが、遠目にはともかく、まじかにひろがる原生林は恐ろしいものです。ラディカルな自然崇拝とも遠く距離を置かざるを得ないわけです。

エネルギー政策のなかにベストミックスという言葉がありますが、自然と人為との比率について、風景を含めた住環境にも何かしらそうしたものがあるのじゃないかとぼんやり感じています。

井の中の蛙である東京者のおれがなんでこうした気持ちでいるのか考えて見ると、9歳まで夏の10日間を山梨の母の実家で過ごしていたことが大きいのじゃないかと思います。生物だけでなく山や雲や雨や風をも含めた自然の濃密さの体験が精神形成に大きな影響を与えているのかもしれません。その一方で、昭和初期に建てられた侘しい家でしたので、TVがないことも相俟って2週間弱の滞在が限界でした。「もう東京に帰りたいよー」と母親にぐずるおれをみて祖母が悲しい顔をしたことをはっきり覚えています。「あのときはほんとうごめんね」といまでも天国のお祖母ちゃんに謝ることがあります。