京浜地帯から湘南・三浦半島にかけて超大規模な港湾整備が開始されている。国家プロジェクトによって東京から独立した経済圏が開発されているのだ。

俺は京浜東北線の横浜以西のとある駅で下車し、埠頭に設けられた遊歩道を歩いている。継続的に拡大し続ける巨大な高層建築群を遥か向こうに眺めながら。

新世紀の高層ビルの容姿は縦長ではなくタンカーの如く横長であり、それらが幾重にも重り合って人工山脈のようにも見える。いったいどれだけの鉄やら建材やらが投入されているのか、素人目には見当もつかない。

突然、その山脈上空に光の粒子がちらばり始める。

「未確認飛行物体だ!本当に久しぶり目撃したぞ」と興奮を覚えた瞬間、本格的な戦闘モードに入った米軍機、自衛隊機が到来しUFOを追撃し始めるではないか! 俄かに緊張が走る。

現代兵器というやつだろうか、セル画ような二次元的な戦闘機はパースもめちゃくちゃで入道雲大になったりする。その見えの印象はテレビ化された『猫目小僧』の動きを連想させなくもない。ただし全体の構図というか遠近感は、マックス・エルンストとかロジャー・ディーンに近い。色彩のトーンは暖色系で主調は黄昏色。

とてもヘンな光景であるがが、最新鋭の軍事技術による空中戦であることは理解できる。おそらく光学迷彩のような何かなのだろう。UFOが戦闘機に形を変えることもあるのだから(つまりUFOも軍事産業の賜物なのだ)。

一時劣勢だったUFOから熱線が発射され、高層建築の一部があっという間に溶解し、流れ弾ならぬ流れビームがこちらに飛散してくるのが見える。●km以上はなれているので我々には逃げる時間がある! 俺はすぐ右手にある民家に逃げ込もうとする。およそ大規模開発中のベイエリアに似つかわしくない、閑静な住宅街にこそ在るのが相応しい昭和建築である。ほんのりと苔むした数段のコンクリ階段に小さな石の門柱。敷石三枚くらいでガラス引戸(のクローズアップ)。まるで向田邦子

(場面転じて)戦闘現場にほど近いペンシル形の高層ビルのワンフロア(新宿南口・小田急サザンタワーの喫茶店を連想する)。つい先ほどまで科学者、IT経営者などが集うイベントが催されていたらしい。ノーベル科学賞受賞者の姿も見受けられる。皆さんのんびりと滅多に見られない珍景を見学している風情。

「よかった!こんな優秀な人間たちと一緒なら安心だ」とホッとする俺。ところが、「わたしは格闘技やってましたから。生き残る自信がありますよ」という某大学教授の囁きが聴こえた瞬間、小さなちいさな戦闘機、それこそプラモデル大の手負いの戦闘機が黒煙を吹きながら窓めがけて飛んでくるのが見える。幸いパッシャと壁に当たってどこかに消えてしまったのだが、それを間近で見ていた、格闘技に自信のあるはずの大学教授が極度に緊張しているのが伝わってくる。

「やばい、考えてみりゃ彼らだって普通の人間なんだ。一刻も早くここから逃げなきゃ!」と即座に非常階段めがけて走る俺。

俺のアクションにつられて会場にいる全員が一斉に避難行動に移ったことを背中で感じている俺。なにがなんでも生き残ってみせるという決意のようなものを抱いている俺・・・・・・[覚醒]


怖い夢でした。覚醒して真実ホッとしました。