綾屋紗月さん、J.L.B.
ASの著作者のなかでも、綾屋紗月さんの場合は、実存的側面での苦悩のウエイトがちょっと大きめなのではないかと(前著を拝読して)感じていたので、『前略、離婚を決めました』をみつけたときは、(失礼ながら)“やっぱりそうなのか”と勝手に納得したのだけれど、そのまま一気読みして、“......そんな事情があったのか”と嘆息。
夙に西原理恵子や吾妻ひでおも描いているけれど、アル中ってヤツは完全に病気なんだな。男のそれが暴力に発展した場合、おかみさんの恐怖と絶望感は察するに余りある。
- 作者: 綾屋紗月
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2009/08
- メディア: 単行本
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プロフィール欄には、ボルヘスの作品を原作としたパフォーマンスに参加したことが紹介されていた。偶然、『論議』を一緒に借りていたので、まさか、そこで繋るとは夢にも思わずビックリ。
でも、ボルヘスは視覚障害者である。思わず吃驚した私の認識が甘過ぎたね。
- 作者: ホルヘ・ルイスボルヘス,Jorge Luis Borges,牛島信明
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 単行本
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これを借りた理由は、あの印象深い一節が如何なるコンテクストでの締めくくりとされていたか完全に忘れていたので再読したくなった所為。
音読しました。引用させていただきます。
ここで私は、過去ではなく未来を思い起こしてみたい。今では黙読が一般的に行われているが、これは幸せな徴候である。つまり、すでにして黙した詩の読者がいるのだ。この密やかな能力から純粋に表意的なエクリチュール――音声による伝達ではなく、経験の直接的な伝達――に至る距離は大きいが、それでも常に未来よりは近いはずである。
私はこれまでの否定的な文章を読み返してみてこう思う――音楽が音楽に、また大理石が大理石に絶望することができるのかどうか私には分からない、しかし文学は、みずからが沈黙することになるであろう時代を予知し、みずからの美徳を蹂躙し、みずからの消滅に心を惹かれ、その死を微笑みをもって迎えることのできる芸術である。
一九三〇年