横尾忠則『病の神様』(文藝春秋)

病の神様―横尾忠則の超・病気克服術

病の神様―横尾忠則の超・病気克服術

とても面白かったです。あっと言う間に読了。

p18 「日常と非日常、あるいは生と死」

子供の頃、熱を出すとどういうわけか現実の空間が膨張したり縮小してみえることがあった。

p98 「閃いた健康サンダル」

そんな部屋の玄関のたたきの所に我が家と同様ずらっと並んでいたのが、健康サンダルだったので、ぼくは思わず「美輪さんも健康サンダル履いてるの」と大声で叫んでしまった。

p105 「ぼくだけが聞こえる静寂の音」

真の静寂というものがどんなものか、ぼくにはわからない。耳鳴りを知らないからこそ、どんなに幸せだろうかと思うようになった。一度でいいから、いや一瞬間でもいいから、音のない真の静寂というものを味わってみたいと思う。

p106 「神か、はたまたUFOか。眼前を動く物体の謎」」

先生は一発で「飛蚊症です」とおっしゃった。やっぱり眼の中を飛ぶ蚊が犯人だったのである。といっても、本物の蚊が眼の中に飛び込んで、そこに住んでいて、ぼくが白い物などを見た時に飛び始めるというのではない。どういう理由で蚊が飛ぶように見えるのかは、説明を聞いたが忘れてしまった。「まあ、このまま蚊とおつき合いするしかないですね」

奇しくも、横尾忠則さんと共通の持病のあることが分かりました。

上に加えて喘息もそうですが、私は今は殆ど発作はありません。

更に、下戸ということでも御同類でしょうか.......まあ病気ではないですが。

あと私の場合、決して大袈裟ではなく宿痾ともいえるのが偏頭痛です。
どんなもんかといいますと、まず、いつのまにか視野に見えない部分、つまり、盲点が広がってきて、そのうち正視する対象が全く把握できなくなるのです。この時点で「ヤバイ、きちまったよ」と狼狽モードとなります。

次に、その盲点が、「閃輝暗点」と呼ばれている輝点へと変化します。単純に喩えれば、テレビなどの所謂ブラウン管(CRT)の画面に水滴が付いた状態を思い浮かべてください。虹色というか、なんというか、不快なギラツキのアレですね。

そのうち、その「閃輝暗点」が視野の半分ほどに拡大されます。この段階までにクスリを呑まずに放っておくと、目の奥のあたりから側頭部にかけて脈打つような鈍痛が襲ってきます。そうなったらもう仕事は手につきません。厳しい嘔吐感とも闘わなくてはならなりません。その苦しみたるや、まだ特効薬が開発されていなかった二十代のころは会社を早退しなくてはならないほど酷いものでした。帰宅中は、頭痛・嘔吐感・視覚障害の三重苦です。とにかく寝るしかありませんので「早く部屋の布団に飛び込ませてくれ」と念じていたものでした。偏頭痛というやつは一度睡眠をとればケロリと治るのが大きな特徴です。睡眠こそがクスリでした。

mixiには偏頭痛関連のコミュがあるので、ご自分もそうではないかと心当たりのあるかたはのぞいてみるといいかもしれません。

オリバー・サックス片頭痛百科』には、患者さんたちが描いた「閃輝暗点」のイラストも所収されています。人それぞれ個性があるのが大変興味深いです。

偏頭痛百科―サックス・コレクション (サックス・コレクション)

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サックス博士の片頭痛大全 (ハヤカワ文庫NF)

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