津田季穂画集
土曜日に神保町でひとと会う。
そして、そのひとたちと源喜堂に行った。
何も買うつもりはなかったけれど、『津田季穂画集』をみつけ、丁度いい値であったので買うことにした。以前、『銀花』という雑誌でこのひとを知り、敢えて喩えれば「イコン」のような黄昏色の風景画に魅了されてしまったのだった。
憂愁でもなく孤愁というものでもない、これは、なんというべきか、誰もいない、誰にもみられていない、絵筆を握っている製作者さえそこには関わっていない風景じゃないかしらと思った。
誰もいない、誰にも見られていない風景ではあるが、それが風景であるからにはやはり見る主体があり、それをひとまず、超越的なまなざしだと言ってみると納得できる気もするが、そんな駄目なレトリックを弄する必要はなくて、その風景は初めて誰かに見られたという、そんな感じの風景ではないかと思えてきた。
一方、静物画は力強い。スーチン的なものを放っている。戸外に反して、室内はぎっちりと物質の密度が閉じ込められている感じだ。と同時に、アモルファス。
戦前に津田季穂は、稲垣足穂、石川淳、辻潤らと親交があったそうで、稲垣の『弥勒』には彼をモデルにした人物が登場するらしい。今度読まなくては......。