迂生も3歳のおわりか4歳のころになると、父がどうやらしんぶんきしゃという仕事をやっているということは知っていたらしい。
当時のことで記憶に残っているひとコマは、出社する父を玄関に見送りに出て、母が「きょうはお夕飯どうします?」と訊いたところ、父が「そとで食べる」と答えたので、「ぼくもそとでたべるーっ」と云って突然ぐずりだしてしまったことだ。
そのときの迂生がイメージしていたのは、おそらく何かのTV番組から得た印象だと思うが、都心のサラリーマンらが日比谷松本楼のガーデンテラスのような場所に集結し、ちょっと美味しそうなものを笑顔で堪能している光景なのだった……。