Sくん篇


三人目の幽霊遭遇はジャパンホラー系といっていいんじゃないでしょうか。

  • [小中学校時代の友達Sくん]
    高校ニ年生の第二学期のはじめに東横線でばったり会った際、「そういえば夏合宿はどうだった?」と訊いたところからSくんの幽霊遭遇譚が始ったのでした。
    当時Sくんは都内名門私立大学付属高校の剣道部に所属しており、丁度その年、部活動が本格化してから八十周年?を迎えていたそうで、「今年の夏合宿は趣きを変えて町場からずっと離れた山中にて猛稽古を敢行する! 各員一層覚悟されたし!」との運びとなったことを事前に聞かされていました。『少年サンデー』で「六三四の剣」(村上もとか著)が爆発的な人気を博していた時代でしたので、みなさん「我こそ六三四なり!」と意気込んでいたんじゃないでしょうか。
    事件は、西日本(山口県or九州?)のどこか寂しい場所で一週間猛特訓にあけくれた最終日、打ち上げの宴が終了したあとに起きたそうです。

    Sくん:「近くにいた奴が『ちょっとそこらへん探検してみないか?』って言い出したんだわ。『おもしろい場所があれば「肝試し」しようぜ』なんて云うわけだよ。おれはもうヘトヘトだったんで嫌だったンだけど、周囲にいた6人ほどが『いこういこう!!』って立ち上がって、おれも手を引っぱられちゃったんだよな……」

    Sくんはものすごく嫌だったンだと思われます。
    というのも中学時代かれはロードショーでリドリー・スコット監督『エイリアン』を観劇したのですが、もったいないことに途中退場しているのです。「あ〜んな気色悪い映画よー耐えられんワ。観にいかんほうがええよ、帰りたくなるよ、ぜっ〜たい後悔するよ……」と真剣な面持ちで、小学校5年生から中学校1年生の3年間近畿に転校していたときに自然習得した「東京弁とミックスな関西弁」(by本人)でアドバイスしてくれたものでした。

    Sくん:「しょうがねえから懐中電灯ひっつかんでぷらぷら林道に出てみたんだよ。」
    迂 生:「懐中電灯くらいで歩けたの? 夜の山道って文字通り漆黒の闇でしょ?」
    Sくん:「そうなんだよね。だけど月が出ていてさ、凄いんだよ山んなかの月夜って、体験したことある? 樹木が迫っていない空間だと小さな街灯があるほどの明るさで歩くのに充分なのよ」
    迂生:「そんなに? じゃ幽霊に出会っても余裕持てそうだね」
    Sくん:「余裕?・・いまだってないんだよ・・二度と思い出したくないと思ってたんだから・・・もうここらへんでやめようかな・・」
    迂生:「まだナンでもない話じゃないか! やめないでくれよ!」


Sくんの話しはそれほど込み入ったストーリーではなく、正直あっけない顛末ではあるのですが、疲れたので続きは明日にしたいと存じます(続きといってもあとチョットで終わる程度なので一切期待しないでください)。
おやすみなさいませ。。。