亡父の恩師の友人(ボン書店からも詩集が出ていた詩人)が行き倒れ、現場近くの病院に担ぎ込まれたらしいとのことで、まず恩師の夫人が見舞いに訪れたところ、医師も看護婦もその詩人に対してほとんど「乞食」を扱うような態度だったそうだ。
このことを聞いた亡父は当時某新聞社でブン屋稼業をしていたので(それまで一度も利用したことのなかった)黒塗りのセダンを本社から借り出し社旗をはためかせて病院にかけつけ、某大學で教授を勤めている恩師とともに院長と面会し名刺を差し上げたのだという。
翌週再度見舞いに訪れると、院長も看護婦もその詩人を「先生」と呼んでいて、それはそれは丁重な扱いだったそうだ。いつの時代に於いても俗世なんて斯様なものだろうが「名刺」よりも先ずは「金」だろう。

[追] ボン書店から詩集を出していたかどうかは要確認。わたくしが別の詩人と勘違いしているかもしれない。