初春以降、都内某安カフェの常連さんだった爺婆たちが姿を消してしまった。彼らが如何なる間柄なのか、オラのように完全なる部外者は知る由もなかったのだが、グループの取りまとめ役で東北出身とおぼしきお爺さんが酩酊した様子でもなく卓に突っ伏し、誰も理解できそうもない「呻き声」を発するにまかせる姿を(二度ほど)目撃して暫くしてからのことだった。最後に見たときは、いつもは彼と楽しそうに話をして「ガハハハ」と豪快に笑っていた元気印お婆さんが、ただ哀しそうな表情でお爺さんの隣に座っていた。

彼/彼女らを当カフェでみかけるようになったのは6年くらい前のことだったように記憶している。最初の頃見かけたちょっと挙動不審の気があったお婆さんが、仲間のひとりとの金銭上の諍いが原因で店内で暴れはじめ、とうとう警察沙汰になってしまったらしき悲話が耳に入ってきたこともあった。まとめ役のお爺さんは「ミヨつぁん(仮)、つうーいに、ココ、出入り禁止になっつまった・・」と云って苦笑していた。