そうだな、そもそも戦争を体験した先行世代は、文字通り無一物から再起したひとも決して少なくなかったはずだよな。

図書館からいただいた、山田風太郎『いまわの際に言うべき一大事はなし。』(角川春樹事務所)によると、終戦直後、山田氏は行き倒れた人々を新宿の地下道でよくみかけたそうだ。みな餓死者だったらしい。
昔働いていた会社の上司は、昭和25年あたりで大学生だったそうだが、ある晩新宿で飲んでいて線路わきで立ちションベンしていたところ、背後に不穏な気配がしたので振り返ると、そこには拳銃を片手にした男が立っていて「ちっ、なんでぇ、セイガクかよ・・・」とぶつぶつ言いながら夜陰に消えて行ったらしい。  「ションベンする前だったらそのまま失禁してたよ」と笑いながら、「あの当時の新宿はすげー怖かったんだよ」とやけに懐かしそうに話していた。