江口寿史『すすめ!! パイレーツ』には、外見がまるっきり ロッド・スチュワートの、いんべ・えいだと称するインベーダーゲーム百万点プレイヤーが登場するのだが、件の友人は中学一年の夏休みにそれを達成していた。

彼は、ゲーセン開店直後から閉店時間まで一回分(100円)でやり通し、昼飯をとりに家に帰っている間は、他校のライバルに代打ちしてもらったので、その分の得点を差し引いて最終的な結果を確認したこと自体は覚えているのだが、果たして何点だったかは記憶にないと言う。百万点どころじゃなかったよ、とのこと。

彼はおれが出会った人間のなかで最も運動神経・反射神経に秀でた男であり、不機嫌な顔して往来をゆけば誰もが道を譲ってくれる強面であり、街場の不貞腐れた青年のむなぐらを掴んでそのまま吊るしあげたこともあるダース・ベイダー卿タイプなので、一緒にいると困惑させられることもあるのだが、『ケロロ軍曹』『おじゃる丸』をこよなく愛するゲーマーでもあり、彼が操作するプレステの画面はあまりにも展開が速く、TVゲームをやらないオレからみるとそこだけ鳥類の時間が流れているようで、くるくると、文字通り目が回ってしまうのである。

一時彼はインターネットに興味を抱き、パソコン購入を考えていたので、とりあえず俺の部屋に遊びに来たときいじらせてみたのだが、しばらく腕組みしてキーボードを睨んでいると矢庭にカチャカチャと文字を入力しはじめるので、「あれ? どこかで試したことあるの?」と訊くと、「うんにゃ、いまはじめての経験だべよ」と云うもんだから、あらためて彼の“機器・機具類操作能力”の高さを感じたこともあった。