何度か繰り返し現れる夢のパターンのひとつが、近隣にもかかわらず三十年以上訪れていなかった、地域のランドマーク的非実在スポットにおもむいてみる、というもの。


夢某月某日
16時過ぎに目が覚めて大慌て。
家から歩いて二十分のところにある元軍港にして現在は工業港(兼小規模漁港)として利用されている「せたがや港」の港湾組合長とアポをとっていたことを完全に忘却していたのだ!
住宅街を走りぬけ、遊歩道(暗渠)を横切って、いきせききって事務所に入ると、事務の小母さんは帰宅する寸前だ。
「あらまあ。組合長はさっき帰ちゃいましたよ。でも心配しないでも大丈夫ですよ、明日午後4時半までのお好きな時間に来ていただければ。私は休みなんでいませんけど、いちいち電話いただかなくても結構ですよ。」
のんびりしたペースの事務所で助かった。それじゃ、ほんとうに久しぶりに、確か小学校二年生以来かと思うけど、構内を散歩してみるか。
夕日がまぶしい湾上と、戦前から一切変わっていない構内の建物・施設・構造物etcをながめながら、こんなに近い場所に、これほど個性的な風景が残存しているというのに、何ゆえずーっと近寄らないでいたのだろうかと不思議に思う自分。
潮の香が鼻腔を刺激していることに気づく自分。
いかにも元軍港らしく岸壁が異様に高いことに気づく自分。
ここは数年前に国の大規模な整備計画の対象となり、地域住民ならびに港湾関係者がこぞって反対運動を展開しているのだ。
都内の住宅街に位置するという稀有な港湾であり、戦前の風景がそのまま堪能できる観光スポットとして、国内だけでなく海外の観光業者からも大きな注目を浴びている。
そんな貴重な景勝地だというのに一体なぜ俺はかくも長い間敬遠していたのか......?
<覚醒>