今度はエコではなくてエーコ

図書館から借りっぱなしだったのでかたづけた。
Umberto Eco , How to Travel with a Salmon: And Other Essays, Translated from the Italian by William Weaver, Minerva

文語が多く、ラテン語、イタリア語、フランス語なんかもそのまんま出てくる。でも、衒学的なパロディについては俺のようなハンチク者でも随所で「ニヤッ」とさせてくれたので、それなりに儲けもんな感じがした。すくなくとも筒井康隆文学部唯野教授のサブ・テキスト 』とか土屋賢二先生のエセイで端的に笑える方であれば、ペダンティックな要素にあまり親しみがなくとも存外楽しめるのではないかとは思う。

ただ、“Three Owls on a Chest of Drawers” での、表題の古詩を巡って歴史的に交わされた(ことになっている)文芸批評・哲学・言語学・論理学上の分析手法を謂わば戯論的に実践する試みでは、様相論理学や生成文法形式意味論等のタームやらダイアグラムやら樹状図なんかが引き出されていて、クワインクリプキ、パットナム、モンターギュらの固有名が遠慮なく登場するので、ハンチクに「ニヤッ」とすることがためらわれてしまった(へたれな、否、生真面目な自分...)。

とはいえ、世界最大の領地を誇る帝国の実寸大地図(領内にあるモノ・存在すべての<写像>(笑)でもある)を如何に製作し如何に閲覧し如何に改訂することが可能かをテーマとした一篇 “On the Impossibility of Drawing a Map of the Empire on a Scale of 1 to 1” なんかは、エピグラフボルヘスを配置していかにもなムードなんだけど、一頁ほど読み進めれば(もしかすると一部の方は当不親切な紹介を読んでいただいただけでも)落しどころが推測できちゃったりするのはご愛嬌だろうか(いや、それはそれで見越されているのかな)。

俺としては、(Ecoの)日常生活のもろもろを綴った “How to 〜” シリーズが気楽に読めてよかったし、幕間的に配された、星間電報文だけのショート・ショートSFはまさに筒井康隆が想起させられて興味深かった(ってな言い方をすると語弊があるのかな、まあいいや)。

How To Travel With A Salmon: and Other Essays

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