とつぜん思い出した随分以前の出来事。場所はヴェロ。

どうやら、国家試験だかなんかの受験カウンセリング業務をやっている二十代後半と思しき男と、受験準備中とおぼしき給与所得者風情の男が二名。

カウンセリング氏は、周囲をはばからず大声でのたまふ。

曰く、「正直いって、三十歳すぎて司法試験にしがみついたまま一度も就職していない人間って、だれも相手にしないですよ。」

曰く、「そんなひとから、択一受かったことだけをもって一般企業に就職紹介してくれって言われてもねぇ......できっこないじゃないですか!」

曰く、「そりゃ、『なんとか当たってみます』とはいいますよ。でも勿論、何もしませんよ。だって、あのひとたちの履歴書に書いてある職歴、コンビニのバイトとかですよ(笑)」

曰く、「塾講? はぁ、確かに経験者は多いですね、皆さん偏差値の高い大学お出になっていますから。でもねぇ、そもそも一般企業は、塾講なんて職歴扱いしませんよ(苦笑)」

曰く、「せつない話ですよ。でもねえ、想像できます? 三十歳過ぎて一度も就職したことのない自分の姿? 焦るどころじゃないじゃないですか? まともじゃないですよ。」

こういうデリケートな話柄をいい大人がペラペラくっちゃべるという行為が「まとも」なのかどうか、まあ、ポジショントークかますつもりがいつのまにか横道に逸れてしまった可能性もあるのでなんとも言えんが、なんというか、久しぶりに他人を引っ叩きたくなる衝動を覚えさせられた。

と同時に、その「執拗」な話し振りから、彼自身が何時馘首の憂き目にあふやも知れぬ恒常的不安を抱いてゐて、それを他人の不幸を語ることで無意識に払拭しているらしきことも垣間見えてきた。

だもんで、聴いていたアタシもせつなくなって店を出て、ずっと時間が経ったいま再び立腹し、再びせつなくなっている。彼には、このタイトル*1をマキシムとし、一層精進していただきたい。

*1:このままじゃだめなので校正もして