ドストエフスキーといえば、Nさんは『悪霊』について、「あいつ、なんつったっけ、『永遠の調和の瞬間』の男、可哀相なやつ・・」といって、40年前に読んだときの記憶を引き出そうとしていた。
俺は、「キリーロフは子供好きだし愛すべき男じゃないですかね。残念なことに狂人ですけど……」と、とりあえず答えておいた。