大師匠を利用したライフハック

珍妙なことを書き記すのもたいがいにしたいところだが、たとえば私は、なんとなく気色悪い生き物を目にしたとき、あのアリストテレス大師匠がそれら対象物を熱心に観察している姿を空想すると、それらに対する嫌悪感が半減されるような気がするのである。

夏の盛りに逞しく成長した黒ゴキブリが矢庭に台所に登場するときも、傍で大師匠が「うーむ」と唸りながら凝視・観察している姿を空想すると、なんとなく穏やかな気持となる。

ただし、『遊星からの物体X』のこれや、『Star Wars: Return of the Jedi』のこれ、さいきんでは、『プロメテウス』のこれなどに対して、「つまりは【アリストテレスの提灯】ではないのかね・・」などと、若干衒学的に呟いたりしてみせると、せっかくのおぞましさが半減しちゃうような気もする。

おそらくその作用力は、吾らがリュケイオンの大師匠のイメージによるものではなく、【提灯】のせいかと思われる。「チン」という響きは「オチンチン」を容易に想起させるので、なんにせよ滑稽味を帯びてしまうのだろう。

エイリアンも「御珍宝星人」とか「勃起珍獣」などと命名されたりしたら、それほど怖ろしいイメージではなくなるのではなかろうか。

ちなみに私は、なぜか古代ギリシャ語の響きを凄く格好よく感じてしまう者である。【リュケイオン】もまさにそうなのだ。

ラテン語はなにかと「アヌス」が目に付くので「凄く格好よい」印象ではない気もするが、たとえば、かのトマス・ホッブズ大先生による、bellum omnium contra omnes(英: the war of all against all)は、とても格好よい響きに感ずる。