昔Nさんと渋谷のパルコブックセンターに立ち寄ったときのことだが、Nさんは「さて、ひさしぶりに見ておかなくては・・・」などと呟きながら手に取った 『G・バタイユ伝』 を徐にひらき、巻頭に収められた清朝の刑吏による残虐非道なる公開処刑の資料写真を、なんとなく厳粛な面持ちで見入るのであった。

「Nさん、拷問フェチでしたっけ?」と問うと
「いやこういうものはね、たまに目にしておかなければならないのだよ・・・」とだけポツリと答えた。
自称唯物論者であり人間性悪説にたつNさんは、「人間というものはな、環境や状況次第でいくらでも鬼畜に成り果てる存在であることを、ゆめゆめ忘れてはならぬのだ……」と、心に刻んでいるように思われた。。。