カスで思い出したが、大学時代、ひと月だけのアルバイトで知り合った奴がスカコアのファンであった。小岩だか青砥だか京成沿線をテリトリーにしている男であった。

高校を卒業してから2年間なにもしていない様子であったが「金がなくなったら短期のバイトすりゃあいいし……」と恬淡としていた。「親が商売やってるからその気になれば継げばいい。就職なんぞはなから考えてない」とのことだった。鞄の類は持ち合わせていないみたいで、コンビニ袋に備品を入れて通勤していた。

奴は非常に虚無的な人間ではあったが、毎夜巷で仲間とつるんで楽しく過ごしているようでもあった。

そのなかに、仲間ではあるが皆から馬鹿にされているヤクの売人がいて、ヤクと言ってもヒマラヤの哺乳類ではなくもちろん覚醒剤のことではあるが、ある晩その売人は公衆便所で胴元と売上金やらブツやらの引渡しをしていたらしいのだが、仕事に慣れてきた気の緩みからか、「いつもごっそり買ってく常連が『最近薄めてるんじゃないの?』って言ってましたよ」などと、一度も口をきいたことのない筋者相手に軽口をたたいてみるもんだから、まさに言うかいわないかの電光石火に、そやつの太腿には匕首が突き刺さっていましたとさ……とのことであった。

斯様なるパン屑話をしながらスカコア男は、「そいつ、思いのほか傷が深くて、結局ビッコになっちまいやんの。ほんっとのばかだよ、ギャハハハハハ」と、心の底から哄笑してみせるのでありました。