以下の本をパラっと読んでようやく(16年経って)合点がいったことがある。
サリン騒動直後のTVワイドショーはオウム教団から入手したビデオを繰返し流していて、画面では怪しい装置を手にした野田成人氏が “当装置によって教団建物周辺に毒ガスの残留物が存在することが検知された” 由を説明している姿が認められたのだが、そのときの彼の表情が面妖と言ってもよいくらいに、のんびりとしたムードに感ぜられたのである。
そもそも彼は最高学府で物理学を学ぶほどの人物である。教団に敵意を抱く一般大衆を上の如く一方的かつ浅薄なロジックで説得できるなどと思うはずがない、と私は感じた。もし洗脳によって信じ込まされているのならば、ちょっとは深刻な表情をつくるくらいの機転を利かすだろう。
それとも一般大衆を文字通りの馬鹿だと見做しているのだろうか? しかるにすくなくとも私には野田氏の表情からそのような独善性はうかがえなかった。相当程度希釈されてはいたが何とは無しに穏やかな微笑すら浮かべているようにも映ったくらいだ。
じつは野田氏は教祖から毒ガス検知の命を受けたものの、そのようなものが教団建物周辺に散布された可能性などおよそ信じられず、おそらくは無反応に終わる結果をどう伝えればよいものか悩んでいたというのだ。ところがなにゆえかロシア製安物検知器が毒ガス反応を示したので、「これで教祖に怒られずに済む、よかった!」と心底ホッとしたのだそうだ。
野田氏による当該記述部分を以って、あのとき彼が見せた不思議な表情については私的にはカタがついたのだが、いまあのビデオを観れば全く違う印象を受ける可能性もある。念のため Youtube などをあたってみたがヒットしない。このようなことが気になっていた人、あるいは、記憶に残っている人など私以外にはゼロではないかと踏んでいるのですが、もし私の記憶が改変されたものだとしても軽ーく受け流してくださいませ。

革命か戦争か―オウムはグローバル資本主義への警鐘だった

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