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あたくしは、対話者が偶々有名人に出会った話なんぞを聞かされても一向にかまわない性質ではあります。「ちょっとセレブと話を交わしたくらいで得意になってやがんなぁ」などと意地悪く思うことは殆どありません。羨ましく感じることも皆無です。むしろ、その有名人のひととなりが垣間見られるようなストーリーであるならば是非とも拝聴したく思いますし、実際一緒になって感心したり、驚いたり、笑ったりしています。
そんなあたくしですが、一度だけ羨ましいと感じたのは、大学時代の友人J君 がロバート・プラントと出くわしたことです。
もちろん一瞬の邂逅譚です。たまたま人だかりを見つけたJ君が、一体なにが起きているのだろうと物怖じせずに分け入ったところ、CD屋から出てきた、ロック史上最も偉大なヴォーカリスト(のひとり)と鉢合わせしたらしいのです。
(プラントの大ファンである)J君がこれぞ物怪の幸いとばかり「コンサートよかったですよ!」と声をかけると、彼は「ありがとう」と静かに微笑んだとのことでした。
さて、ここで重要なのは出会った時と場所なのです。なんとなれば其処は、陽光が高層ビル群にさえぎられて空間全体が蒼っぽく染まりはじめた晡下の西新宿・音盤屋エリアだったからです。
プラントに限らず伝説的ミュージシャンが、あの時間帯のあの場所に降臨するというのは、少なくともわたくしにとっては実に幻想的です。謂わばヒプノシス的だと言えましょうか――変な喩えですが。
以下はあたくしが常圓寺檀家墓地の側道で是非とも出くわしたいと念じてをりますセレブたちです。
- Pink Floyd( Syd Barrett、R.Wright は幽霊として)
- Throbbing Gristle( P.Christopherson は幽霊として)
- Jeff Beck
- Pat Metheny