そこに風景があったか否かなどまるで記憶にない。人間は生きていること自体が悪なのであるからして私は自ら死ぬべきであることにハタと気づき、その絶望的な真理を前にしてヨロヨロとうずくまりそうになった瞬間、「いや、だからこそ誰もが死を免れ得ないのではないか!? 考えてみればそれはじつに喜ばしい『恩寵』だったのだ!」と気持が一転したところで目が覚めた。

いまとなってはどういう理屈だかよく分からない。しかし今日一日何かホッとした気持ちでいられたのだから不思議だよ。