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どうでもいいことを思い出した。

J君は俺のことを「ひそか君」と呼ぶ事があった。

前島密にちなんでいるらしいのだが俺の名前はもちろんのこと教科書などで確認できる前島の風貌ともまったく共通点がなく純粋に彼独自の連想が働いたものだったと思われる。

周囲の人間の中にはJ君のことを大言壮語ばかりのお調子者だと見るむきも多かったが俺ははやくから彼の独特な言語感覚に注目しており時折だれにも理解できぬ架空言語が口をついて出てくることを知るにおよんでからは「この男は(何なのかはいまのところ皆目分からぬが)何か(特殊な才能を)持っているに違いない」と確信していた。

その「確信」が正しかったのかそうではなかったのかは確かめられぬままではあるのだがどうやら世俗的には成功したといえる人生を歩んでいるようなのでこのまま幸福な家庭を築いてほしいと願っている。