忖度記(其ノ一)

早稲田をあるいていたら横転自転車がぶつかってきた。
ヘッドホンで何かを聴きながらペダルをこいでいた青年が大コケしたのだ。
思わず「うわっ」と叫び「君だいじょうぶかっ?」と声をかけると、青年は「大丈夫っス」とだけ言ってすぐに立ち上がりそのまま自転車に飛び乗って去っていった。
「すみません」の一言すらなかったが一刻も早くその場から逃げ出したい気持でいたのだろうと俺は忖度した。