天地真理はわたしらというよりも上級生たちのアイドルだった。
あたしらは「チャイナ世代」にあたっていて、王貞治・ブルース・リー・アグネスちゃんが圧倒的なカリスマだった。
むかしのをのこは「女なんて!」という(表面上の)男尊女卑の態度を貫いていたもので、男が女アイドルを崇敬する場合は目立たぬようちょっと控え目にしていたものだったが、アグネスちゃんだけは別格で、みな堂々とかのじょの下敷きを購入し、「どうやったらかのじょと結婚できるのだろうか? 中国語が必要か?」などと真性に阿呆な妄想に耽っていた。

そういえば、おれたちのノビーの兄上様は、ブルース・リー『ドラゴン怒りの鉄拳』に出演しているばかりか制作側の一員だったそうだ。途轍もなく凄いことに感ずるんだけども……。