わけのわからぬ「企業文化」のために潰されても別段納税者が困るわけではない私大卒業生のおれではあるが、当時イケイケの某社(IT系)が文系からも広く人材を集めていたので、そこを受けようかと考えている旨を外国語演習終了後の雑談中にもらしたところ、S先生が、「ボクはたまたまその会社の向かいのマンションに住んでいるのですが、あそこは365日24時間全室に明かりがついています。就職部は何といってるのか知りませんが、近所ではいい評判を耳にしません。もう一度よく考えたほうがいいんじゃないでしょうか?」とアドバイスしてくれた。

バブル崩壊後某社も凋落し、そのブラックぶりが世間に露呈されたりしたもんだったが、S先生のアドバイスがなかったらあそこに入社し、3年くらいでポンコツになってポイッと棄て去られていたかもしれない。

S先生は40代も半ばに至らんとする非常勤講師だったのだが、数年後都内名門私大から専任講師として引き抜かれ、翌年あたりで助教授となり、それからしばらくして無事教授になられていた。

いまでも本屋さん/図書館でS先生の御名前を目にするたびに「もう一度よく考えたほうがいいんじゃないでしょうか?」という、先生の穏やかで、かつ、真摯な口調を思いだすことがある。

イイ先生だったなぁ・・。