近所を散歩していたら、「ズサッ」という、だれかが慌てて何かを避けようとする気配を感じたのでそちらの方を注視すると、MTB型自転車に乗った小学校6年生くらいの男児が正面から歩いてくる下級生(小学校4〜5年生男児)に向かってそのまま自転車で突っ込もうとするので、その下級生があわてて道を譲った瞬間だった。

上級生はずっと遠くの方を見ている体(つまり当該下級生など眼中にないという示威行為)でポーカーフェイスを決めていた。運動が得意そうなタイプだった。一方の下級生は、自分より強い相手からコケにされた際の防衛本能的な「微笑」をうかべて、過ぎ去った相手をチラチラとふりかえっていたが、前を向き直したきには暗い表情であった。

そうだったのだ……。
学校空間には隙あらば下級生をからかおうとする、厄介な上級生グループが蟠踞しているものだった。

過去は過剰に美しく改変されることがある。おれの小学校時代の記憶も若干「あの頃はよかった」度が無意識のうちに上げ底されていたように思える。じっさいのところ上級生がいるうちは完全なるリラックス状態など望むべくも無かったのだ。校庭開放においても遊びたい場所を上級生が占有しておれば諦めるほかはなかった。そういう場合に交渉できるのはリトルリーグに所属していて普段から上級生たちとも気心が知れているスポーツ万能の少数者であった。

実はおれもリトルリーグに入会することをなかば決めていたことがあったのだが、「練習は土日祝全部あるよ。病気とか家の事情とかならしょうがないけど別のことで休むのは絶対にダメだよ!」と、すでに大会にも出場経験のあるYg君から何度か釘をさされたので、「ンじゃ止すわ・・」と、あっさり入会を諦めたのだった。

当時のおれは土日祝に野球をすることよりも多摩川三浦半島で釣りをしてうつくしい魚たちと出会うことのほうが断然魅力的だったのだ(賢明なるYg君はそのことを知っていた)。