カルト力
とあるカフェで休んでいたら、なにかの会合の帰りに立ち寄った風の、とても耳障りのする声の男性が6〜7名の男女をひきつれてやって来た。
どういったらよいのか、とにかくその男性の話し声が癇にさわってしょうがないのである。単に声が大きいのではなく、人様の頭の中にズカズカあがりこんでくるような不躾な感じなのである。
テーブルを寄せたり、マッキントッシュのPCを開いて電源を探したりと慌しくしていた後、「さて、それじゃ、トークセッションを始めますか」という宣言があって、ごく普通の世間話が開陳されることとなったのだが、次第にそのグループがユング心理学的な考えをベースにした自己啓発集団だということが伝わってきた。
癇に障ってしょうがない声の持ち主は、そのグループのインストラクターであり、普段はスポーツ関係の仕事(やはりインストラクター?)に従事している人間のようであった。かれの仕事現場では客の注意を無理やりにでも引きつける発声力が必須とされているため、いわゆる「職業柄」からくる声の介入力(=耳障り度)だということが推察された。
結局その「トークセッション」なる雑談は、巷間で騒がれていることどもを、なんとなくユング的なアプローチで考えていこうといった趣向であるように思われた。といってもそこでは「ユング」だけでなく、なにがしかの固有名(ビッグネーム)が口にされることはなかった。ただ、「集合的無意識」の如き“心の領域”が彼らにとってのキー概念であることが伝わってきたとうことだ。
そのインストラクターは高校生の頃まではけっこうやんちゃで喧嘩もめっぽう強かったそうなのだが、ある出来事(仲間内のリンチ事件?)をきっかけにして非暴力主義者に転ずることになったと云っていた。街中で他人の喧嘩の仲裁に入って逆に相手からボコボコに殴られてしまったときも「一切反撃はしなかった」のでしばらく病院に通院するはめになっちゃったと、とくに自慢する様子でもなく語っていた。
「日本のニュースでは殆ど報道されてないけど、アフリカ・中東・アジア諸国では悲惨な出来事がひきもきらない。その出来事によって、たとえ一切耳目に触れなくとも、われわれの心は傷ついている。俺の力だけでは不足なので皆のマインドパワーを結集しなくてははならない・・・」のようなことを、体育会系的なノリで語っていた。
まさにど真ん中のカルトだなー。でも、経済的にはそこそこ豊かな人間の集まりみたいだなー。インストラクターの声は耳障りではあるがリーダーを務めるだけあってキャラ的には憎めない感じではあるよなあ・・・などと思わされているうち、「よし、きょうはここまで、解散とするか!」&「来月のカンファは大阪が主催だけどスケジュール空いているひとはできるだけ参加しようぜ!!」と掉尾を飾りつつ、そのままアッサリと引き上げて行こうとするので、もうちょっと生でカルトを味わってもよかったのになー、とも思わされてしまうのであった。