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市川崑監督『ぼんち』のなかに、KYのおれだからこそたいそう感心したセリフがあって、それをメモするのを忘れていたので、ツタヤで借りてもう一度観た。
それは、河内屋主人・喜兵衛(船越英二)が逝去し、ぼんである市川雷蔵が料亭「浜ゆう」で五代目・喜兵衛襲名披露を挙げた宴の後であり、帰りの車に乗りこんだ雷蔵一行に仲居頭のおふく(京まち子)が最後に挨拶をして見送るシーンである。
お濡れやしまへんでしたか?
さっきのですぎたまねはおゆるし願いとうおます。
おみやげを玄関へお運びするときに一足落としてしまいまして、
包みがほどけてしまいまして、
そのときの粗相もどうそ一緒におゆるし願いとうおます。
お心やすうおいでやす。
これをうけて、お家さんの毛利菊枝が「ようでけたおなごやないか?」「おふくの取りさばきは立派やったなぁ」などとわざとらしく感心し、孫の雷蔵におふくをあらたな子作り相手の候補とするよう暗に迫るのである。ちなみに前妻(中村玉緒)を無理矢理離縁させたのはこのお家さんなのであった……。
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