と思うんだよね……。02
きのうはさ、ちょっとH君をかいかぶりすぎたと思うんだよね。事前にクラスの連中に洗脳の仕込みを施すなんてさ、小学6年生にゃ無理な芸当だわね。
目をつむっていろって言われてもさ、じっさいは薄目を開けていたに違いないんだよ。だからカラクリとしてはさ、確かまじないの最後が相手の手首に紐を結わえてそれをたぐるしぐさをし続けることだったから、薄目でボンヤリそれを眺めているうちに「なんだか手を挙げてみたくなってきちゃったぞ」みたいな、なんというか「ここで俺の両手がもちあがったらクラスで大きな話題となるだろうな……」みたいな、いわば充分に「相手の空気を読んだ」こころ持ちになっていたんじゃないだろうかと、こう思うんだよね。
ただ俺自身その術にかかってしまったときに本当にそのような「空気読み」の気持でいたか否かは記憶はないんだよね。次第に暖かい風が吹き上がってくるかのような感覚があったことははっきり記憶していて、あとでそのことをH君に告げたとき「そうでしょ!! おれもそうだったんだよ!!」って大きく同意されたんだけどさ。
ということはね、少なくとも“無意識”が絡んだ現象だったとは言えそうなんだよね……。本当に不思議、というか、あきれちゃうのはさ、こんな面白い現象を目の当たりにしてさ、なんで一過性の遊びで済ましちゃったのかということなんだよね。俺って真性の凡愚だよなーって、われながら呆れ果てる気持になるんだよね。
そういえば中学校の頃にさあ、悪童(つっぱり)たちがクラスの中の気の弱い奴らを廊下に呼び出してさ、そいつらの首をしめて落とす遊び(実際はいじめ)に興じていたことがあってさ、連中はそれを「催眠術」と称していたんだけど、それって大陸の人間が捕虜を拷問するときに「手術」と称したりする非道さに通ずる印象があるよね。でも当時の俺はさ、「臍が茶沸かすぜwww小6時代の俺のほうがよっぽど催眠術師だったワイ!」と密に優越感を抱いていたんだよね。阿呆のきわみだよね。
なんか「……と思うんだよね。」が若干すくなかったと思うんだよね……。