いつだったかカズオ・イシグロ辻仁成の対談がNHKで放映された。
9.11同時多発テロに触発されてその晩一気に短編を書いてしまったという辻に対して、しばらくは何も書く気持が起きなかったとイシグロが返答していたはずである。
後日この部分について、Nさんは辻の軽薄さを一笑に付していたのであった。
しかし俺は、ある事象がきっかけとなってそれまで伏流していたものがいきおい奔流となって湧出することはあるだろうし、また、その逆もあるだろうから、いずれにせよ書き上げた作品がどんな代物かを判ずるまでは笑うことはできぬのではないかと思うた。

とはいえものごとをいちいち留保していくのは疲れるものである。ステロタイプに従って、あるいは外見や出自から受ける印象のまま、乃至は、己の直観に逆らわずに単純(無責任)に価値判断するほうが、駄話の次元では作法に適っているのだろうなーと思うた次第でもあった。

とはいえ(ry