大学生のとき某書道展審査選考会のアルバイトをしたことがあった。

表具屋の指示のもと審査対象作品を抱えて偉い先生方が20名ほど腰掛けたひな壇の前に出て、しばらくじっとして、終わったら列にならんで別の作品を受けとりまた同じようにひな壇の前に出て行く……というようなきわめて単純な仕事であった。

偉い先生方が揚げる「○」(プラカード)の数によって、何千?もある応募作品が粛々と審査されていった(一点あたり 5〜10秒ほどで処理されただろうか)。

全作品の審査が終わると仙人のような風貌の書家たちはそれぞれ没作品の森に分け入りはじめ、「これはここにきちゃダメダメ!」「あったあった、早く向こうに移して!」「これは入選じゃなきゃ」などと呟きながら、予定にはないはずの独自の審査をしていくのであった。